カンボジア選挙に対するベトナムの複雑な眼差し

7月に予定されているカンボジア総選挙を前に、隣国ベトナムとカンボジアとの関係に亀裂が深まっているようだ。香港英字メディアのアジアタイムズによれば、ベトナム共産党最高指導部の政治局員らは昨年11月、フン・セン首相に対して総選挙後に退任するよう迫った。ベトナム側はフン・セン首相に「権力の座に長く居座り過ぎており、去り際がきた」とまで言い放ったという。事実であれば、フン・セン首相とベトナム指導部の間には決定的な溝があることになる。
ベトナムがカンボジアに対して不満を強めている理由は2つある。まずカンボジア経済が中国依存を強めており、南シナ海問題で露骨に中国寄りの立場を取るようになったからだ。カンボジアはホスト国を務めた2012年秋のASEANサミットで、共同声明から南シナ海問題で中国を非難する文言を削除させた。
2つ目はカンボジア国内に住むベトナム民族に対する嫌がらせや国外退去処分が深刻化しているためだ。両国は未解決の国境問題も抱える。
ただフン・セン首相は最大野党・救国党を解党させ、長期政権への対抗勢力はいまやない。EUや米国は野党弾圧を批判して総選挙の支援を中断している。そんな中、河野外相が4月中旬にカンボジアを訪問し、100億円規模のODAに合意。総選挙で使う投票箱の提供なども行う方針だ。
このカンボジアに対する日本の外交姿勢をベトナム有力紙「トイチェー」は「日中の競い合いの只中にあるカンボジア」と題した記事で読み解いた。フン・セン首相による野党への弾圧について「内政事項」と批判を避け、支援を続ける日本について、「地域および国際情勢に対する地政学上の関心を始めてあらわにし、中国と競争しつつより大きな影響力を持とうとする意志を隠さなくなっている」と評した。カンボジアが中国一辺倒にならないよう日本に期待しているとみるべきだろう。
かつては友好関係にあったフン・セン首相は中国になびき、独力では引きずりおろすこともできず、欧米の圧力も機能していない。日本のカンボジア支援に望みをかけるトイチェーの記事からは、隣国に対するベトナムの複雑な立ち位置が垣間見える。