「トゥーティエム不法立ち退き」の責任

「市民の資産を奪い取るようなことはしない」。ホーチミン市トップの市共産党委員会書記であるグエン・ティエン・ニャン氏が宣言すると聴衆からは喝采を浴びた。6月20日に開かれた市2区トゥーティエム新都市区の住民と市選出の国会議員団との対話集会での一コマだ。
ホーチミン市中心部1区からサイゴン川を挟んだ対面にある2区トゥーティエムは、円借款によるトゥーティエム・トンネルが2011年に開通して一気に便利になり、今はマンションの建設が進み、住んでいる日本人駐在員も増えている。
開発マスタープランは1996年に首相決定されたが、開発対象は当初の500ヘクタールから2005年にホーチミン市に657ヘクタールに書き換えられた。首相決定によるマスタープランが、地方政府のホーチミン市に修正される過程で、本来は立ち退く必要がなかった住民が強制的に土地を手放さざるを得なかったとして、63世帯が市を相手取って裁判沙汰にもなっている。住民が1平米当たり数十万から数百万ドンで手放した土地は、3000万ドンにも高騰したという。
これまでほとんど報道されてこなかったトゥーティエム開発の闇に光が当てられるようになったのは、市党書記として10年にわたり君臨したレー・タイン・ハイ氏が2016年の党大会で退任したからだろう。今年3月にはハイ氏の弟が経営する企業の会計不正で、4月には息子の市12区人民委員長が隠し子がいたとして党から規律処分を受けた。さらに側近だったタット・タイン・カン同市党副書記も市郊外ニャーベー郡の土地の払い下げを不当に承認したとして処分待ちの状況だ。
またホーチミン市側は今年5月になって「1996年当時のマスタープランがどこにも見当たらない」と釈明したが、コピーの存在があちこちで主張されるなど市の杜撰な対応も問題視されるようになっている。
5時間半続いた20日の集会で、ニャン書記は「開発計画の外にあった住民を立ち退かせることはしない」と住民をなだめた。ニャン書記は前日、立ち退き後にバラックに住むことを強いられている住民のもとを訪れたという。開発予定地ではプロジェクトの見直しもあり得るが「マスタープランが紛失された状態で計画の内外をどのように見直すのかはっきりしない」という指摘もある。
また集会で住民から「政府査察院は、過去の市指導部の責任も含めて法令違反の有無を明らかにすべきだ」という批判が出た。政府査察院の調査結果は7月15日が期限だ。ハイ前書記の責任にまで踏み込むかが見どころだ。