サベコ争奪戦で際立つタイビバの政治力

12月16日付日本経済新聞によれば、ビール最大手の国営サベコの株式争奪戦からキリンとアサヒの日本勢は撤退したもようだ。株価の高騰と出資上限で外資が過半株を握れない情勢を考えれば、2社の判断は納得がゆく。
18日に行われる入札への参加申し込み期限は17日。さらに株式の25%以上の応札に必要な事前登録を行ったのは、タイ・ビバレッジ傘下のベトナム・ビバレッジ1社のみ。放出される国有株54%に対して、キリン・アサヒを含めた外資が25%未満の応札し、ベトナム企業と組んで過半株を握る可能性もゼロではない。ただベトナム・ビバレッジは、タイビバからの出資比率を49%に抑えた「ベトナム企業」として単独で過半株の取得も可能だ。出資後の経営の主導権を視野に入れ、心置きなく豊富な資金を注入できる。タイビバは、サベコ株落札の最右翼に一気にのし上がった。
タイビバの情報力とスピードは目を見張る。商工省が入札の詳細を発表し、外資の出資比率を49%までと発表したのが11月29日。既にハイネケンなど外資数社が計10%を保有しているため、外資が落札できる株式は39%であることが公になった。
これに対してベトナム・ビバレッジの登記は10月6日。タイビバの完全子会社BeerCoが、F&Bアライアンス・ベトナム投資社に49%出資し、 F&Bアライアンス・ベトナム投資社がベトナム・ビバレッジの株式を100%出資する。つまりベトナム・ビバレッジはタイビバにとって実質的にひ孫だが、F&Bアライアンス・ベトナム投資社への出資比率が49%になるために名目上「国内企業」になるわけだ。
さらにベトナムメディアによれば、BeerCoは11月末にF&Bアライアンス・ベトナム投資社の株式49%を買い入れている。つまりタイベブは10月6日までに、ベトナム国内に受け皿を準備しておき、商工省の発表を受けてF&Bアライアンス・ベトナム投資社への出資比率を49%に改めて設定したとみられる。F&Bアライアンス・ベトナム投資社のベトナム側パートナーは誰なのかは謎だが、タイベブは応札の条件をあらかじめ予見し、公開されるや否や素早く対応し、サベコの過半株取得へ突っ走っている。
さらにベトナム・ビバレッジの代表者Michael Chye Hin Fah氏はビナミルクの取締役も兼ねる。ビナミルクには、TCCグループのフレーザー・アンド・ニーブ(F&N)が約19%を出資し、ベトナム政府に次ぐ大株主だ。TTCはベトナムでスーパー「MMメガ・マーケット」も買収している。サベコを手中に収めたとき、ビールや乳製品、小売りを連携させれば、とてつもない存在感を放つことになる。