スロバキアと関係悪化、独での拉致に新疑惑

東欧のスロバキアとベトナムとの関係が急速に悪化している。昨年7月に発生した独ベルリンでのチン・スアン・タイン氏(元ペトロベトナム建設会長)拉致事件が原因だ。ベトナム情報機関が隠密裏に行ったタイン氏の強制帰国の過程で自国が利用されたという疑惑にスロバキア政府は激怒しており、ベトナムに対して制裁措置も辞さない構えだ。
欧米メディアの報道によれば、タイン氏を乗せた車両は拉致の3日後、スロバキアの首都ブラスチラヴァを訪問中のトー・ラム公安大臣とスロバキアのカリナック内務大臣が会談したホテル前に駐車した。ラム大臣一行はブラスチラヴァからモスクワに飛んだが、その際にスロバキアから政府専用機を借りた。タイン氏はその政府専用機に乗せられた可能性があるという。一行は本来、ウィーンで飛行機に乗る予定であったが、急に旅程を変更し、スロバキアに政府専用機の借用を申し出たとされる。
スロバキアがタイン氏の送還を支援した可能性も指摘されたが、同国のペレグリニ首相は関与を否定。記者団に「我が国の善意が悪用されたとしか説明がつかない」と話した。同国外務省は「もし疑惑が事実であれば、両国間の関係に深刻な悪影響を与える」と声明を発表し、ベトナムから納得がいく説明がなければさらなる外交的措置を取る可能性があるとしている。
首都ベルリンの公園での外国スパイ一味による誘拐劇を受けてドイツ政府は、ベトナムの一部外交官を追放したうえ、両国間の戦略的パートナーシップ関係を停止させた。事件にかかわったとされる工作員の裁判も進行している。5月2日に行われたペレグリニ首相とメルケル首相の会談でも拉致事件が議題に上った。
これでベトナムはEU内でドイツだけでなく、スロバキアとも関係が悪化した。すなわち妥結済みのEU・ベトナムFTAの批准にいよいよ黄信号がともった。ベトナムが「クロ」と判断されれば、FTAを契機とした輸出増の期待は急速にしぼみかねない。