ベトナム版「紅二代」と権力闘争

12月23日付日本経済新聞は「ベトナム 元閣僚逮捕で噂される超大物包囲網」と題して、グエン・フー・チョン党書記長による汚職追及がグエン・タン・ズン前首相におよぶ可能性を指摘した。昨年末から今年にかけてズン氏の息がかかった党幹部らが次々と処分されており、書記長は最終的なターゲットとして前首相を照準に置いているという見方はウオッチャーの間で広く共有されている。
ただ捜査が「最強の政治家」とも言われたズン氏がいきなり及ぶようなことはないだろう。搦め手から徐々に追い詰めるのがベトナム流だ。12月に逮捕されたズン政権の閣僚ディン・ラ・タン氏への追及も、側近のチン・タイン・スアン氏が自身のレクサスに公用車向け「青ナンバープレート」を使っていたという「よくありそうな話」が端緒だった。タン氏が拘束されたのはそれから1年半後だ。
では次に狙われるズン氏の周辺は誰か? それは家族ではないかとの観測が出ている。ズン氏の長男タイン・ギ氏は南部メコンデルタでキエンザン省党書記、次男のミン・チエット氏は南部ビンディン省で党の要職に就く。2015年の省書記就任時、ギ氏は39歳で全国最年少だった。また娘のグエン・タイン・フオン氏はベトキャピタル証券会長を務め、娘婿の越僑ヘンリー・グエン氏はベトナムでマクドナルドを展開する。息子たちの異例の出世や娘のビジネスと自身の利権との関係は、ズン氏在任中からたびたび指摘されてきた。
ネット上ではキエンザン省の観光地フーコック島における不正なホテル開発を巡って、ギ書記との関連が取りざたされている。また携帯大手モビフォンによる有料テレビAVGの異例の安値での買収も今後は捜査が進むとみられるが、モビフォンとベトキャピタル証券も関係が深いとされる。
さらにここにきて、かつての党幹部の二世たちに対する縁故人事に締め付けが強まっている。クアンナム省では元党書記の息子で計画投資局長に抜擢されていたレー・フオック・ホアイ・バオ氏が党から除名されることになり、ハウザン省でも元党書記の息子のフイン・タイン・フォン氏の商工局長への昇進が問題になっている。10月には元党中央検査委員長の息子グエン・スアン・アイン氏が不正でダナン市書記を解任された。
2018年にベトナム版「紅二代」への処分がどこまで広がるか。日経が言う「ズン氏包囲網」を見る上で一つの重要なポイントとなる。