ペトロベトナム裁判と対欧外交

国営ペトロベトナム建設(PVC)の違法な火力発電所建設の受注などに関する裁判で、同社元会長のチン・スアン・タイン被告は1月22日、親会社ペトロベトナムのディン・ラ・タン元会長らとともに判決を下され、自身は横領などで終身刑が言い渡された。タイン氏はPVC子会社のPVPランドに絡んだ横領事件でも訴追されており、開廷中の裁判で死刑判決を受ける可能性がある。
タイン氏は昨夏、逃亡中のドイツでベトナム秘密警察によって拉致され連れ戻されたとして二国間の外交問題に発展している。首都ベルリンでの冷戦ドラマさながらの国際法違反にドイツ政府は、拉致に関与したとされるベトナム人外交官に国外退去処分を命じた。
反汚職を進めるベトナムの現指導部にとって、タイン氏はタン氏などの大物逮捕につなげる重要な足掛かりとして是が非でも拘束が必要だった。一方でドイツはODA供与国であるだけでなく、既に合意済みの欧州・ベトナムFTAの発効を左右する大国だ。関係をこじらせるのは得策でない。
ドイツ側も当初、ベトナム政府の謝罪と再発防止策を求めていたとされる。しかし22日の判決を受けてドイツ外務省広報官は、死刑にならなかったことに「留意する」と軟化の兆しを見せた。ベトナム政府はドイツでのタイン氏の弁護士の陪席こそ認めなかったものの、ドイツなど欧米外交官の傍聴は認めていた。
タイン氏は法廷で「ドイツにいる妻子の面倒を見させて欲しい」と涙ながらに陳述し、最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長に許しを請うた。既にベトナムの一部フリージャーナリストからも、一定期間後にタイン氏はドイツや第三国に出国を許されるのではないかとの観測が流れている。タイン氏の処遇を巡って水面下で両国はぎりぎりの交渉をしているはずだ。