リンちゃん殺害事件「無期懲役」の波紋

レェ・ティ・ニャット・リンさんを殺害した渋谷恭正被告を無期懲役とした7月6日の千葉地裁判決は、ベトナムでもすぐにニュースとなった。遺族が死刑を求めていたこともあり、反響の大部分は「刑が軽すぎる」という批判だった。
父親のレェ・アイン・ハオがメディアに姿をさらし、死刑を求めて100万人以上の署名を集めた事件は、ベトナムでも大きく報道されてきた。ベトナムのネット上では「無垢な少女をわいせつの上で殺害して死刑にならないとはどんな法か?」「日本の刑務所にはエアコンも毛布も新聞も娯楽もある」「初めて日本人を呪った」…といったコメントがあふれた。
ハオさんは、ホームページ上で「ベトナムで裁判を行ったら、そんなぐらい犯罪をすると裁判の結果は死刑することは当然です」(原文ママ)と訴えて署名を募った。ハオさんは、判決を受けて「本当に悔しい」として控訴の希望を検察に伝えたという。
ただネット上のコメントが、ベトナムの世論の全てとも言えない。40代の女性に聞くと「判決を支持できないが日本の法に基づきだされたものだ」と返ってきた。著名弁護士レェ・グエン・ズイ・ハウ氏は2月、日本では署名や世論は判決に影響を与えないとして「署名活動はシンボリックなものに過ぎない」と指摘し、「公正で法に基づいた裁判をただ求めたい」と自身は署名しない考えを発表した。
法律系サイトに掲載されたハウ弁護士の意見が12万回近くシェアされたことを見ると、ベトナム人たちも異国で起きたこの不条理に深いところで揺さぶられているのだろう。ハオ弁護士にとっては、ベトナムで署名活動が盛り上がっていたあの時期に、こうした意見を公表することは大変勇気がいることだったはずだ。同弁護士は「署名をしないのはリンちゃんやご遺族にとっての正義を求めないからでもなく、犯人を擁護するからでもない」とも断っている。
裁判員をつとめた男性は「被害者と同じくらいの子どもがいて感情移入しそうだったが、公平に判断しようとしっかりと考えた」(NHK)と話している。刑を下す側も悩んだ末の無期懲役だった。判決への賛否は当然あるだろうが、日本の司法の在り方や裁判に関する正しい情報を伝えることも、ベトナムに関わる日本人がすべきことでなかろうか。