強まるインドとの軍事協力

インドとベトナムの軍事協力が強まっている。在印ベトナム大使のトン・シン・タイン氏は7日付タイムズ・オブ・インディアのインタビューで「インドとの防衛関係の拡大はベトナムの防衛力を向上させる上で重要な役割を果たす」と述べ、海軍や空軍士官のインドでの訓練実施や、インドからの巡視船調達などを実例に「多くの手法で防衛力増強を支援してくれている」とインドの協力を歓迎した。
防衛協力の目玉として注目される兵器が超音速巡航ミサイル「ブラモス」だ。ロシアとインドが共同開発したブラモスは最高速度マッハ2.8、世界最速の対艦巡航ミサイルとされ、潜水艦や海上、航空機、陸上からでも発射可能だ。射程が290キロと限定されているため飛行時間は短い。つまり迎撃がきわめて困難なことから、ベトナムに配備されれば南シナ海にある中国の軍事施設にとって脅威となる。
中国の優位に対する強力な対抗手段であるブラモスにベトナムは2011年から関心を示してきた。ベトナム外務省の報道官は今年8月、インドからのブラモス購入を示唆する発言をし、憶測が広がったが、インド外務省報道官は直後に売却の情報を否定した。だがタイン大使は、ブラモスの売却交渉の現況を問う記者に対して「ベトナム国防省が具体的に何を購入するかという情報を持ち合わせていない」とはぐらかしている。
インド外務省報道官が売却を否定した当時、中印両国の軍同士が国境の係争地、ドクラム高地でにらみ合いを続けていた。このためインド側が対立をエスカレートさせないためにブラモス売却の情報を火消ししたともみれる。
この見立ての背景にはもちろん中国の海洋進出という脅威を越印が共有しているという事実がある。インドのモディ首相は昨年9月、インド首相としては15年ぶりに来越し、両国関係を「包括的な戦略的パートナーシップ」に格上げすることで合意した。今年7月にはインド国営石油会社ONGCが南シナ海の「九段線」内にある鉱区の権利について2年間の延長をベトナムが認めた。まさにベトナムはモディ首相がが掲げる「ルック・イースト(東方)政策の中央に躍り出ている」(英キングスカレッジ、ハーシュVパント教授)のだ。
タイン大使も、南シナ海での中国の人工島建設や軍事設備の整備について「現状を変更し、航行の自由を脅かす」動きとした上で、「ドクラムで起きたことと似ているかどうか分かるでしょう」と越印が共有する中国の脅威を訴えている。
ブラモス売却交渉がどこまで進んだかは明らかではない。ただパント教授は、「インドの決定は、長期的な対外・安全保障の優先事項に基づくべき」と指摘し、売却を支持している。ただ実際にブラモスが配備されたとき、中国は反発するはずだ。ブラモスにより地域の緊張が高まる懸念も否定できない。