情報戦の勝利、タイビバのサベコ株落札

世界中のビール関係者の注目を集めた国営サベコ株の争奪戦は12月18日、タイ・ビバレッジの勝利に終わった。当初は関心を示していたキリンホールディングスやアサヒグループホールディングスが入札を見送った中、タイTCCグループのタイビバが最後は資金力にモノを言わせた。
ただ勝因は約5500億円を投じた資金力だけではない。前稿「サベコ争奪戦で際立ったタイビバの政治力」の通り、タイビバは入札要件の全貌が明らかになる2カ月近く前に今回の直接の応札者となった「ベトナム・ビバレッジ」社を設立している。タイビバは出資比率を抑えてベトナム・ビバレッジを「ベトナム国内企業」とし、外資出資規制をかいくぐってサベコの過半株の入札を可能にした。
売却額の高騰、50%未満に設定された外資出資比率の上限、入札仕様の公開からわずか3週間という時間的制約によりライバルたちは尻込みしたと思われるが、タイビバは周到な準備をしていた。準備できるだけの情報があったのだろう。
伏線はある。TCCグループを率いるジャルーン・シリワタナパクディ会長は昨年7月と今年6月、二度にわたりベトナムを訪れてフック首相と会談している。6月の会談ではベトナムのビール市場への参入に強い意欲を示した上で、「ベトナムのビールブランドを海外市場に輸出させたい」と語り、ベトナム・ブランド維持にこだわっていた首相の心をくすぐった。
今年8月に首相が訪タイした際にも、シリワタナパクディ会長はサベコへの関心を改めて伝えるだけでなく、タイ国内で経営するスーパーで「ベトナムの農産品販売を推進したい」とささやいた。外資出資規制、高値での売却、透明性ある入札といったベトナム側が掲げた複雑な連立方程式の解は、財閥の総合力を生かしたトップセールスから生み出された。