法の支配と国民の怒り、児童虐待裁判から

78歳の老人による児童性的虐待事件の判決に、ベトナムの司法が揺れた。バリアブンタウ省人民裁判所が5月11日、2人の女児にわいせつ行為を行ったとされるトゥイ・カック・グエン被告に1年半の執行猶予を付けたからだ。
グエン被告は一審では6歳と11歳の女児に対するわいせつ容疑により昨年11月に禁錮3年の実刑判決を受けた。しかし二審で裁判所は、11歳の女児であれば抵抗は可能だったはずとして証拠不十分と判断、さらに被告が共産党員で高齢で持病があり、中央銀行のバリアブンタウ省支店長を務めた経歴を考慮し、執行猶予を与えた。
判決に対して検察だけでなく、法曹界、市民からも怒りの声が上がった。判決の再考を求めるオンライン上の意見書には5万人以上が賛同している。判決の4日後に最高人民裁判所がバリアブンタウ省裁判所に判決の見直しを指示し、6月1日には一審の実刑判決を支持した。
党員や銀行員としての国家への貢献は被告が犯した罪とは関係がない。また11歳の女児が抵抗可能だったという判断もにわかに納得しがたい。だが世論の風向きを受けて判決をすぐさま見直した最高裁の姿勢も「大岡裁き」を思わせる。
児童の性的虐待事件は各地で起き、国民の注目を集めている。ダオ・ゴック・ズン労働大臣は今年に入って572件が報告されていると今月の国会で答弁した。専門家からも、物証や被害者からの証言の確保が難しく、もみ消されてしまう法の抜け穴が指摘されている。法の下の平等への取り組みと実効的な法整備が求められている。