活動家弁護士のドイツ「追放」

複数政党制の導入を求めて2015年から拘束されていたグエン・バン・ダイ弁護士と妻のレー・トゥー・ハー氏が6月8日、ドイツに入国した。政府転覆を企てた罪で今年4月にそれぞれ禁錮15年と9年の判決を受けたばかりだが、「追放」という体裁を取って事実上、亡命させた形だ。
ベトナム政府はもちろん釈放の理由を公表していない。だが昨年夏のチン・スアン・タイン・ペトロベトナム建設元会長の拉致事件を契機に急速に悪化したドイツならびにEUとの関係悪化を打開する措置と見るのが妥当だ。ドイツ政府は「顕著な人道的ステップであり、国際社会にとってよいシグナル」と評価した。
亡命を求めてベルリンに潜伏していたタイン元会長をベトナム諜報機関の手により連れ去られたことに激怒したドイツは、両国の戦略的パートナーシップ関係を中断していた。最近ではタイン氏の移送にスロバキアから借り受けた政府専用機を利用した疑いも浮上しており、同国との関係も悪化している。
夫妻の突然の釈放の裏に人権団体の圧力もあるようだ。6月6日にNGO90団体が署名済みのEU-ベトナムFTAについて、政治犯の釈放や言論の自由などが確保されるまで批准しないよう求める書簡をEUに送った。ダイ弁護士もNGOが釈放を要求する対象に含まれていた。
こうした文脈から考えれば、ダイ夫妻の釈放は対欧外交の好転を図るための手段と見てよいだろう。欧米メディアのジャーナリストは「釈放を契機にドイツがホーチミン市メトロの整備資金供与に踏み切るか、さらなる反省を求めるか」と分析している。大国である中国と異なり、ベトナムは西側への配慮も求められる。実利と一党独裁のイデオロギーの間でベトナム政府は落としどころを探っている。