習近平の個人支配とベトナム

中国が国家主席の任期を連続2期までとする憲法の規定を削除する動きは、ベトナムでも各紙が報じた。有力メディアVNエクスプレスは、憲法改正の方針が明らかになった翌日の26日付で「憲法改正、習氏の絶対権力を後押し」と見出しを打った。
同記事は、習近平国家主席が「(37年にわたりジンバブエを大統領として支配した)ムガベ氏より長く権力を握ることが理論的には可能となる」とする専門家の指摘や、中国のSNS上での憲法改正への批判を紹介している。ベトナムメディアはいずれも国の統制下にあるため、記事は国家に容認されていることを意味する。
中国共産党の提案に決して好意的でない論調は、ベトナムが党書記長、国家主席、首相のトロイカを筆頭とする集団指導体制を敷くからだけではなく、習氏が「就任以来、南シナ海での領有権の主張を強めてきた」ことへの反発があるからだろう。
ただ興味深いのは、このニュースを報じるベトナムメディアがいずれもネット上でのコメントを掲載していないことだ。さらにベトナム共産党機関紙ニャンザンは、報道すらしていないようだ。つまりは中国への批判が自国に飛び火することを恐れているとともに、ベトナム共産党として中国の憲法改正の行く末を慎重に見守っているのだろう。
ベトナムは世界でも屈指の反中感情が強い国でありながら、共産党一党支配という国家体制においては中国の兄弟国だ。近年の反汚職運動やインターネットへの規制強化に向けた取り組みは、中国の相似形と言える。さらにグエン・フー・チョン党書記長が2016年党大会で再任後は、ベトナム版「トラもハエも叩く」の腐敗追及により書記長の求心力が急速に高まり、ベトナム国内でさえ集団指導体制の今後を危惧する研究者が出てきた。
中国は3月の全人代で憲法改正案を承認し、5月初頭にはベトナム共産党の中央委員会総会がある。71歳のチョン書記長は2021年に開かれる次の党大会では引退が確実視される。ただ「習一強」の深化は、ベトナムでも党書記長と国家主席を同一人物が兼ねるような集権体制への変化を進める可能性があるだろう。