中国系発電所による海洋投棄案

「報じられたことよりも報じられなかったことを探る」。以前の拙稿でも書いたベトナムでニュースを読む基本は、地元メディアを賑わせている新たな環境問題にも当てはまる。ビンタン第1発電所(ビントゥアン省)建設工事で発生した100万立方メートルの泥や土砂を海洋投棄する計画案だ。
発電所に併設する埠頭や周辺航路を整備するために浚渫した土砂などを、サンゴ礁が生息し、漁場でもある沖合に投棄する案に、漁業協会などは強く反発している。天然資源・環境省は「汚染物質は含まれていない」として一旦は許可した。しかし、環境影響評価に参画した専門家リストに虚偽が発覚、さらに評価を実施したコンサルティング会社の代表者が発電所を所管する商工省の現役幹部だったことが分かり、評価の信憑性に対する批判が高まった。チン・ディン・ズン副首相は7月24日、ベトナム科学技術アカデミーにあらためて調査を指示し、首相に報告することを決めている。
実はこの発電所、中国企業が整備している。中国南方電網が2015年に着工し、2018年の稼働後も運営を行う予定だが、地元メディアは海洋投棄に絡んだ記事で、この事実に言及していない。「ベトナムの海を中国に汚される」ことは国民には我慢がならない。だからこそ中国南方電網への言及が巧妙に避けられているとみえる。
海洋投棄の是非を政府がどう判断するのか。許可すれば国民の不信が増すことは避けられない。副首相の指示で始まった科学的調査は、政治的問題を背負っている。